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地の果て

相泊で震えながら着替えを済ませた。
ツーリングスーツがこれほど暖かくて心地よいものだったのか…と改めて思う。
ここで書くことでもないが、昨年買ったこのアルパインスターのツーリング用スーツはよく出来ている。
少々の雨も気にならないし、インナーを付けなくても温度のレンジは10度から20度までなら気持ち良く走れる。今の季節の北海道にはもってこいだった。まあ、関西の夏は暑くて着てられないが。
さて、相泊を出て、どうするか…
実は、以前読んだ片岡義男の小説に、ハーレーXLH1200にまたがった女性が登場するエピソードがあった。
その女性は苫小牧当たりから襟裳を抜け、反時計回りで一晩中、北海道を走り続け、夜が明けた頃、この相泊を通り過ぎる。
そして、この道の先、もうそれ以上道は無いのだが、小説の上ではその道の先には草むらが広がり、そしてその突き当たりは高い断崖となっている。
女性はXLH1200にまたがったまま、道から草むらに速度を変えることなく乗り入れ、そして、その断崖から、冷たい海へダイブしてしまう。
小説では、その女性に興味を持って、彼女がどこまで行こうとしているのか、ずっと後をつけて走るバイクの少年目線で綴られ、女性の心理描写は一切無く、彼女が何を想い、なぜ、バイクごと海へダイブしたのか、理由は全く明かされていない。
疑問と驚きだけが残る作品だったが、片岡の小説にはその手のものが多く、それも魅力の一つとなっている。
そして、僕もそのエピソードが好きだ。
で、前置きがまたまた長かったが、今回、僕はその彼女がダイブした断崖を見たかったのだ。
相泊温泉の海抜0mから階段を登って道路に出る。高さは10mほど。この高さでは断崖にはならないかな、
先は少し高さが増しているのだろうか?
バイクの進路をさらに東、地の果てへ向けた。
ほんのいくばくも走らないうちに、アスファルトで舗装された道は消え、看板が立っていた。
ここから先は漁業関係者用駐車場
しかし、ゲートがあるわけでも無く、入ろうと思えば簡単に入れる。
彼女はこの駐車場を抜けて、断崖へ臨んだのだろうか?
海へダイブする気なら看板など無視して、進んだのだろうか?

バイクを止めてしばらくの間、考えた。
そして、出した結論。
あの最後の場面はやはり片岡の頭の中だけのもので、実在する場所ではなかった。
なぜなら、その関係者用駐車場は小さな港に面しており、海抜2mもない。この駐車場の先に草むらが続き、その向こうが崖になっていようとも、彼女がそこからどれほどの勢いでダイブしても、大怪我するだけで、あの小説のような結末にはならない。
あれは小説の中だけの世界だった。
まあ、それはそれで全くかまわない。
あの道路の先から続く断崖が、本当にあったのか、なかったのか、
それを知るにはここまで来るしか無いのだから。
そして、たった今それを知ることが出来た。
それで充分だった。
僕はバイクをUターンさせ、来た時と同じ道をまっすぐに進んでいった。
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