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インスタントコーヒーをもう一杯 VOL2

温泉は十分に温かかった。
しかし、冷えた手先を入れると、指先にしびれを感じる。
ゆっくり、充分に温まって行こう。まだまだ時間はある。
脇を流れる滝の音に耳を澄まし、頭上の突き抜けるように青い空を眺めながら、
温泉のぬくもりをのんびりと楽しんだ。
風呂から上がり、火照った身体のままバイクにまたがった。
ツーリングスーツのジッパーを開け放ったまま、すぐ近くにある道の駅に立ち寄った。
ここでしばらく休みながら軽く昼飯としよう。
すこし、サバの切身が小さいのが気になる柿の葉寿司を二人でほおばった。
 

 
太陽もずいぶんと高くなり、気温も上がってきた。
もう、寒さは感じないだろう。
ふたたび、2台のカブはワインディングロードを走り出した。
視界の左右に広がる緑は、ゆっくりと、そして確実に後方に引かれていく。
流れる景色も、この速度でなら細部まで認識することができる。
険しく遠くにそびえる岩壁。
なんだ、層雲峡まで行かなくても、こんな景色は身近にあったんだ。
眼下に流れる川も覗き込んだ。
こんなにも、美しい川がそばを流れていたんだ。
カブだからこそ、気づいたことがたくさんあった。
カブでなければ、気づくことはなかった。
そんな景色を拾い集めることができた。
たまにはカブで旅するのもいい。
そして、こんな気分を味わうために僕はカブに乗っていたんだ。
そんな単純なことを、改めて思い出した。
国道168号を走り続けると、本宮にでた。
 

 
道の駅でなんとなく止まった。缶コーヒーを飲みながらベンチで話し込んだ。
いつまでに到着しなければならないという理由もない。
なんなら、このままここをゴールにしてしまっても構わない。
テントを積み、ある程度の食糧も積んでいる僕らを、束縛するものは何一つない。
地面さえあれば、そこはゴールになりうる。
そんな自由こそがオートバイのキャンプツーリング最大の魅力だ。
そして、カブにはさらに大きな自由が与えられる。
どこにでも溶け込める姿、どこにでも入り込める大きさ、
速くは進めなくても、そんな自由こそが武器だった。
再び立ち寄った道の駅。
トイレしかない、とてもシンプルすぎるものだったが、ここにしかない魅力もあった。
道の駅のすぐ裏にスロープがあった。
少し、寄り道をしていこう。
行けるところまで行ってみる、というのが僕の旅の掟なんだよ。
熊野川の両岸はほとんどが峻嶮な山が迫っている。
上から川を見下ろすことができても、なかなかそばに降りることはできない。
だが、このスロープからは簡単に熊野川の川原に出ることができた。
大きめの丸い石がゴロゴロと並ぶ、よくありそうな川原。
並のバイクでは、ここを走ってみようとはなかなか思えないだろう。
だが、カブならこんな川原でも走ることができた。
いざとなれば両足をついて漕げば、たいていの場所を走ることができる。
そんな乗り物がカブだった。
川原に2台のカブを停めて、ただ景色を眺め続けた。
 

 
これがカブの旅だよね。
潮岬まで、あとどれくらいかかるのだろう。
そんなことは気にする必要もなかった
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