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空気の読めない男


旅も終わりに近づいてきた。
最後のツーリングポイントへ向かう。
ここを過ぎれば、あとはフェリーに乗るだけだ。...

雨はわずかに降り続いている。
ところどころに見え隠れする、溶け残った氷に注意しながら、ひたすらに走り続ける。
ふと、お土産を買うのを忘れていた事に気づく。
会社には何個入りをいくつ…
澄み渡っていた清水に、墨汁がポトリと落とされ、ジワジワと濁っていくように、この一週間で浄化された心が薄汚れていくように感じる。
ああ、どうせ今考えても買えないんだから、最後のポイントが終わってからにしよう。
自分に言い聞かせながら、思いを込めて小樽から60キロを走った。
岬の湯 しゃこたん
ここは小樽からの帰路、いつも立ち寄っている。
露天風呂から神威岬が遠くに眺められる。
そこに赤く染まった夕日が静かに沈んでいく様子を、最後まで眺め続けることができる。
今日は夕焼けにはならないだろう。
しかし、この旅の終わりを感じることは充分に可能なはずだ。
そんなことを考えながら、パーキングにオートバイをゆっくりと停めた。
するとすぐ近くに車を停めた若い男が声を掛けてきた。
男「これ、セローですよね」
俺「そう」
男「限定モデルですよね」
俺「そう」
やべ、こんなとこでオタクかよ、やめてくれよ、
男はまだ何か言っている。
俺は気づかないふりして歩き出す。
すると、大声で
男「僕は日本一周を2回したんですよ」
俺「あ、そう」
お前は俺に興味あるかもしれないが、俺はお前に興味ないんだよ、
つうか、お前、暇人だな、ちゃんと働けよ!
男はまだ何か言っていた。
普通、ここまでつれなくしてやったら、話したくないという事に気付くだろ?
この旅、最後の思い出になるはずのせっかくの場所で、なんなんだよ!
気分はすっかり悪くなっていく。
脱衣所では、なるべく目を合わせないようにしながらウェアを脱いでいく。
とにかくたくさん着ているので当然、男よりも遅い。
ようやく入浴の準備を済ませ、浴室に向かう。
屋内には男はいない。
目指すは露天風呂。
すると目の前に男がいる。
なんで、そこにいるんだよ!
露天風呂はそれほど広くはない。
どこに座ろうと声の届く範囲だ。
また、目を合わせないように、遠くの神威岬と薄赤く染まった水平線だけを見つめながら湯に浸かった。
すると、またもや男が話しかけてくる。
男「北海道まわってるんですか」
俺「そう」
男「この近くの◯◯は行きましたか?」
俺「知らない」
男「結構有名ですよ、ホッケ定食が美味いですよ」
俺「あ、そう」
もう、気付けよ!
お前と話なんかしたくないんだよ‼︎
俺がYes、Noしか答えないから、今度は違う質問をしてきた。
男「北海道は何日いたんですか」
俺「7日」
くそ!もう嫌だ、どうやっらこいつは黙る?
「お前に興味ないから黙っててくれ!」
か?
う〜ん、
「構わないでくれ、静かに楽しみたいんだ!」
か?

すると、またもや来た。

男「北海道には雪まつり見に来たんですか?」
誰がバイクなんかに乗って雪まつりを見に来るんじゃ!
バカか?お前は?
と思った瞬間、切れていた。

俺「ほっといて静かにしてくれ‼︎」
おお、ズバリもいいとこだ。
ま、ええか、ホンマの気分やから。
ここまで言って男はようやく口をつぐんだ。
なんなんだよ!
俺の時間を返せ!
お前は自分の興味を満たすだけで満足かもしれないが、俺にはなんの得にもならんし、せっかくの貴重な時間が過ぎていくんだよ!
ほら、夕日がどんどん変わっていく様子が途切れてしまったやないか!
忌々しい!
ああ!
だから!
バイクなんかに!
乗るような奴に!
ロクな人間はいないんだよ‼︎
チキショー‼︎‼︎

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コメント

No title

台無しでしたね(汗 自分の日本一周自慢を聞いて欲しかったのでしょう

変なスキー板を取り付けたライダーに べらべらと話しかける勇気は私にはありませんけど(笑)

No title

> 47uF16vさん
あっはっは、
ほんとうにあかん奴ですわ!
これ読んだら反省してほしい!
だれでも話しかけたらええっちゅうもんじゃないで!ってね。
静かに夕暮れを楽しみたい、渋い男もいるのですわ!笑

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