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標高1000mの風 最後のその6 

テントを立てると、ホテルの本館で風呂に入った。
キャンプ場でありながら、心地よくゆったりと湯船につかれることは嬉しかった。
シャンプーで一日中かいた汗と汚れを落とすと、生まれ変わったようにさわやかな気分だった。
二人でホテルの外にでると、すでにあたりは夜の闇に包まれていた。
気温は22度と温度計に表示されていた。
テントサイトへ戻り、少し遅い時間だが、ゆっくりとバーベキューの準備を始め、僕は炭をおこすことに熱中した。
一人で旅をするときは、簡単で小さなキャンプ用コンロで、すべての調理を済ませる。
調理といってもご飯を炊く、湯を沸かしてレトルトのおかずを温める、コーヒーを入れる、くらいのことだ。
たまに、ご飯を炊くコッフェルのフタをフライパンにして、炒めものをするときもある。
しかし、その程度だった。
折りたたみバーベキューコンロを使うのは初めてだった。
二人で肉や野菜を焼くのには、ちょうどよい大きさだった。
スーパーで買った肉は、ほどよく二人の空腹を満たしてくれた。
ビールもたっぷりと僕の胃袋に吸い込まれていった。
とても気持ちの良い満足感と、一日中走り回った疲れからくる眠気が、僕の全身をゆるやかにおおった。
炭が完全に燃え尽きてしまう前、僕は言った。
「おやすみなさい、また明日、楽しく走りましょう」
「おやすみなさい、また明日」
 
穏やかな朝がやってきた。
暑くもなく、寒くもない。
朝日をうけて、テントの生地がゆっくりと色ついていく。
僕のテントは森のような深い緑。その緑色に染まった光線が、僕を眠りから目覚めさせてくれた。
 

 
彼もすでに目覚めていた。
僕はコーヒーを沸かし、二人でのんびりと味わった。
目の前には他のオートバイも止まっている。
 

 
僕らのエボリューションエンジンよりも、さらに年代ものの、ショベルヘッドエンジンを積んだハーレーが4台。
そして、カワサキのマッハⅢが1台だった。
この5台は仲間で一緒に旅をしているようだった。
カワサキに乗るライダーが、自分のオートバイの整備を始めた。
長身で、しっかりとした体格に、さりげなく着ている白いTシャツが爽やかだった。
長めの髪に、軽くウェーブをさせたパーマヘア、そして端正な顔立ちは、
この目の前にある古いカワサキとよく似合い、とても様になっていた。
 
「長く乗っていらっしゃるのですか」
僕から声を掛けた。
「いえ、3年です。」
意外な答えにやや驚いた。
「オートバイ自体は1974年製です。」
「39の歳オートバイですね。調子はどうですか。」
「調子は悪いです。」
答え方がどこか、ユーモラスだった。
「昨日、突然白煙を吐き出してしまい、今様子を見ています。」
僕にそんな古いバイクを修理する知識はない。
うなずいて、作業を見守った。
作業がひと段落すると互いの旅を話し合った。
どこからきて、どこを通って、どうだったか、そしてこれからどこへ向かうのか。
オートバイ乗りが出会って話す、普通の会話だった。
でも、一つとして全く同じ話などない。
 
どこからきて、どこを通って、どうだったか、そしてこれからどこへ向かうのか。
 
少し前の過去から始まり、ちょっと先の未来へ続く、小さな旅のお話。
多分、カワサキの彼と再び出会うことはないだろう。
彼らが無事に旅を終えたかどうかも知ることもないだろう。
同時に彼らも、僕らが最後まで旅を無事につづけられたか、知ることはない。
旅の途中、出会い、そして別れた。
 
この目の前にそびえる大きな山。
その名前の通り、大山という。
荒々しい姿をした、とても存在感がある山だ。
空の甘いブルーに覆われても、その無骨さを和らげることはない。
中腹から上は緑の植物を寄せ付けることすらない。
 

 
キャンプ場をあとにして、僕らは南へ向かった。
ゆっくりとこの大山の中腹を周る道路を使って、山を一周することにした。
 
標高は1000m
つめたく冷えた高原の風が、オートバイをゆったりと走らせる僕らを、やさしく包みこんだ。
 

 

 
 
 
 
 
 
 
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コメント

No title

こんばんわ^
ツーリングの楽しみの一つに新しい出逢いありますね

No title

だるい、独りよがりの文章を読ませてしまってすいません・・・
友達と飲んでいるとき「読みにくいわ~」と怒られました。
友達は全部読んでいるそうです笑

No title

お久しぶりです!
マフラーをターンダウンの直管にしたら
爆音になりました。
やっぱハーレーは音ですね!音!
動画もアップしているので見て下さい。

No title

1989さん
ご無沙汰しております。
あいかわらず、大爆音で走ってるんですね!
存在感があふれるバイクですね!
ただし、相変わらず、長距離は爆音のおかげで疲れが増します笑

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